がん治療時の「有害な免疫反応と治療に必要な免疫反応の違い」を特定

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がん治療時の「有害な免疫反応と治療に必要な免疫反応の違い」を特定

がん治療の際に発生する有害な免疫反応と、求められている腫瘍細胞を標的とした免疫反応の違いが明らかになりました。

Scientists from the University of Geneva (UNIGE), Switzerland, and Harvard Medical School, United States, have succeeded in establishing the differences between deleterious immune reactions and those targeting tumour cells that are sought after.

参照元:https://www.unige.ch/communication/communiques/en/2021/cancer-des-immunotherapies-sans-effets-secondaires1/
– ジュネーヴ大学 Université de Genève.  July 2, 2021 –

近年、免疫療法は、がん治療の分野に革命をもたらしています。

しかし、健康な組織における炎症反応は、重篤な副作用を引き起こし、治療を永久に中止しなければならなくなることが多いです。

この副作用はまだ十分に解明されておらず、免疫療法を行う上での大きな障害となっています。

スイス・ジュネーブ大学(UNIGE)と米国・ハーバード大学医学部の研究者らは、有害な免疫反応と、求められている腫瘍細胞を標的とした免疫反応の違いを明らかにすることに成功しました。

免疫メカニズムは似ていますが、関与する細胞集団は異なるようです。

Science Immunology誌に掲載されたこの研究成果は、がん患者のための、より的を絞った、より効果的で危険性の少ない治療法を想定することを可能にします。

免疫療法は、患者の免疫系を大量に刺激することで、多くの命を救ってきました。

しかし、残念ながら結果が伴わないこともあります。

UNIGE医学部病理学・免疫学講座およびがん・血液学トランスレーショナルリサーチセンターのISREC財団がん免疫学講座の責任者であり、スイスがんセンター・ルマンのメンバーであるミカエル・ピテ氏は話します。

「免疫系が集中的に活性化されると、その結果生じる炎症反応が有害な影響を及ぼし、時には健康な組織に大きなダメージを与えることがあります。そこで私たちは、がんを排除することを目的とした望ましい免疫反応と、健康な組織に影響を与える可能性のある望ましくない反応との間に違いがあるかどうかを知りたいと考えました。この2つの免疫反応の間に特徴的な要素があることがわかれば、より効果的で毒性の低い新しい治療法の開発が可能になるでしょう。」

科学者たちは、CHUVとHUGで治療を受け、このような毒性反応を起こした患者の肝生検サンプルを用いて、働いている細胞と分子のメカニズムを調べ、類似点と非類似点を明らかにしました。

免疫療法に関連した毒性反応では、2種類の免疫細胞(マクロファージと好中球の集団)が健康な組織を攻撃する役割を担っているようですが、がん細胞の死滅には関与していません。

一方、もう1種類の細胞(樹状細胞の集団)は、健康な組織の攻撃には関与しないが、がん細胞の排除には不可欠です。

Mikaël Pittet氏は話します。

「免疫療法は、免疫系に警告を発し、炎症反応を引き起こす特殊なタンパク質の産生を誘発します。腫瘍では、これらのタンパク質は、免疫系ががん細胞を破壊するために歓迎されます。しかし、健康な組織では、これらのタンパク質が存在すると、健康な細胞が破壊されてしまいます。このような炎症性タンパク質が、腫瘍と健康な組織の異なる細胞で生成されるという事実は、興味深い発見です。」

樹状細胞は非常に珍しく、マクロファージと好中球ははるかに一般的です。

マクロファージは、胎児の頃からほとんどの臓器に存在し、一生を通じて存在し続けます。

これまで考えられていたのとは異なり、これらのマクロファージは必ずしも炎症を抑制するわけではなく、免疫療法によって刺激されると、マクロファージが存在する健康な組織で有害な炎症反応を引き起こす可能性があり、毒性が異なる臓器に影響を与える理由を説明しています。

マクロファージは薬物によって活性化されると、炎症性タンパク質を産生します。

そして、このタンパク質が好中球を活性化し、毒性反応を引き起こします。

Pittet氏は話します。

「これにより、好中球を操作することで、免疫療法の副作用を抑制できる可能性が出てきました。」

研究チームは、遺伝子ツールを用いて細胞の活動を調整したマウスの免疫反応を調べ、この発見を確認しました。

その結果、このような副作用をなくすために利用できる抜け道を突き止めることができたのです。

実際、好中球は、治療標的となりうるTNF-αなど、毒性発現に重要な因子を産生しています。

TNF-α阻害剤は、すでに関節炎患者の免疫反応を調整するために使用されていますが、がんの場合も、免疫療法中の好中球の毒性を抑制するために有用である可能性があります。

Pittet氏はまとめます。

「さらに、好中球を抑制することは、がんと闘うためのより効果的な方法になるかもしれません。好中球の中には、毒性反応を引き起こすだけでなく、腫瘍の成長を促進する細胞もあります。好中球を制御することで、健康な組織での毒性を克服し、がん細胞の増殖を抑えるという、2つの有益な効果が期待できます。」

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