新着記事
認知的回復力の高さは、常に話を聞いてくれる人が傍にいるかが重要
話したいときに話を聞いてくれる頼りになる人が常にいることが、認知的回復力の向上と関連しているようです。実際に、特定の社会的支援をより多く受けている人の認知機能は、大脳の総体積に比べて高いようです。
Supportive social interactions in adulthood are important for your ability to stave off cognitive decline despite brain aging or neuropathological changes such as those present in Alzheimer’s disease, a new study finds.
参照元:https://nyulangone.org/news/having-good-listener-improves-your-brain-health
– ニューヨーク大学グロスマン医科大学 NYU Langone Health. AUGUST 16, 2021 –
脳の老化やアルツハイマー病のような神経病理学的変化があっても、認知機能の低下を防ぐためには、成人期の社会的交流が重要であることが、新しい研究で明らかになりました。
JAMA Network Open誌に2021年8月16日に掲載された本研究では、話したいときに話を聞いてくれる頼りになる人が常にいることが、認知的回復力の向上と関連していることが確認されました。
認知的回復力とは、脳の加齢や疾患に関連した物理的な変化から予想されるよりも、脳が良好に機能する能力のことで、多くの神経学者は、精神的に刺激的な活動や身体的な運動、積極的な社会的交流を行うことで向上すると考えています。
ニューヨーク大学グロスマン医科大学のLulu P. and David J. Levidow神経学助教授であり、神経学部門の認知神経学センターのメンバーで主任研究者のJoel Salinas(ジョエル・サリナス)氏は話します。
「今回の研究は、脳の老化や病気の影響に対する緩衝材として考えられます。この研究は、アルツハイマー病の治療法がまだ確立されていないことを考えると、認知機能の老化を遅らせたり、アルツハイマー病の症状が出るのを防いだりする可能性を高めるために、自分自身や自分が最も大切に思っている人のために対策を講じることができるという証拠が増えてきたことを示しています。」
アルツハイマー病は、主に65歳以上の高齢者が罹患する進行性の病気で、記憶力、言語能力、意思決定、自立した生活能力などに支障をきたすため、約500万人のアメリカ人が罹患していると言われています。
サリナス氏によると、アルツハイマー病は通常、高齢者が罹患する病気ですが、今回の研究結果は、65歳未満の人でも社会的支援の状況を把握することが有益であることを示しています。
脳の容積が1単位減少するごとに、聴取可能性の低い40代および50代の人は、聴取可能性の高い人に比べて認知年齢が4年高くなりました。
サリナス氏は話します。
「この4年間は非常に貴重なものです。脳の健康を守るには、何十年も前に脳によい習慣を身につけ、それを維持するための多くの時間を失った後、ずっと年を取ってから考えることが多いのです。しかし、今日、今すぐに、あなたの話を親身になって聞いてくれる人がいるかどうか、自分自身に問いかけてみてください。そして、あなたの大切な人にも問いかけてみてください。このシンプルな行動が、長期的な脳の健康と、最高のクオリティ・オブ・ライフを実現するためのプロセスを始動させます。」
また、サリナス氏は、患者さんが話したいときに頼れる人がいるかどうかを尋ねるという質問を、標準的な社会歴の質問に加えることを医師に勧めています。
「孤独感は、うつ病の多くの症状の一つであり、患者さんの健康にも影響を与えます。孤独感は、うつ病の多くの症状の1つであり、患者さんの健康にも影響します。患者さんの社会的関係や孤独感に関するこの種の質問は、患者さんの幅広い社会的状況や将来の健康状態、診療所外での実際の様子について多くのことを教えてくれます。」
研究の実施方法
研究者らは、米国で最も長く継続され、最も綿密にモニターされているコミュニティベースのコホートの1つであるFramingham Heart Study(FHS)を用いて、平均年齢63歳の2,171人の参加者を対象としました。
FHSの参加者は、傾聴、適切なアドバイス、愛情、親しい人との十分な接触、感情的なサポートなど、支持的な社会的相互作用の有無に関する情報を自己申告しました。
認知機能の回復力は、FHSのMRI検査と神経心理学的評価を用いて、大脳皮質の容積が認知機能に及ぼす影響を測定しました。
本研究では、社会的支援の形態が脳体積と認知機能の関係に及ぼす修飾効果を検討しました。
その結果、ある特定の社会的支援をより多く受けている人の認知機能は、大脳の総体積に比べて高い事がわかりました。
この重要な社会的支援の形態は、「リスナーの利用可能性」であり、それはより大きな認知的回復力と強く関連していました。
研究者らは、個々の社会的相互作用の研究をさらに進めることで、心理社会的要因と脳の健康を結びつける生物学的メカニズムの理解が深まる可能性があると述べています。
サリナス氏は話します。
「聞き手の有無などの心理社会的要因と脳の健康との間の具体的な生物学的経路については、まだわからないことがたくさんありますが、今回の研究は、私たちが聞き上手を求め、自分自身も聞き上手になるべき具体的で生物学的な理由を示す手がかりとなるでしょう。」
本研究には、サリナス博士の他に、ボストン大学医学部、ハーバード大学医学部、マサチューセッツ総合病院マッキャンセンター、モナッシュ大学ターナー脳・精神衛生研究所、ハーバード大学THチャン公衆衛生大学院、ボストン大学公衆衛生大学院、カリフォルニア大学デービス校、テキサス大学健康科学センターサンアントニオ校グレン・ビッグスアルツハイマー病・神経変性疾患研究所の研究者が参加しています。
この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!
関連記事
新着記事
-
男女ともに長生きになる「男女平等」2023.03.07健康
-
他者を犠牲にして利益を取る・利益を度外視して他者への害を取り除く2023.03.06人体・脳
-
「寿命を延ばす」良質な睡眠2023.03.05健康
-
見極める力を養う「チャットボットの精度」2023.03.04技術
-
健康増進と生きがいにつながる「森林浴」2023.03.03健康
-
米国の6人に1人「肥満による死」2023.03.02健康
-
週休4日制で生産を維持する2023.03.01社会
-
オンライン学習で学生に届く教育方法2023.02.28学習
-
学業成績に影響を与える「夜間の睡眠」2023.02.27健康
-
心の豊かさに大きく影響を与える「目的意識を持った10代の若者」2023.02.26健康
よく読まれている記事
N E W S & P O P U L A R最 新 記 事 & 人 気 記 事
WHAT'S NEW !!
-
健康
男女ともに長生きになる「男女平等」
【男女ともに長生きになる「男女平等」】 権利とは人間が作り出した構造ですが、男女平等が進むと男女ともに長生きになるようです。 The first global study to investi... -
人体・脳
他者を犠牲にして利益を取る・利益を度外視して他者への害を取り除く
【他者を犠牲にして利益を取る・利益を度外視して他者への害を取り除く】 他者を犠牲にして自分の利益を選ぶ、自分にとって利益は少ないが他者への害を防ぐ、道徳的なに... -
健康
「寿命を延ばす」良質な睡眠
【「寿命を延ばす」良質な睡眠】 良質な睡眠をとることは、寿命を何年も長くする可能性があります。 Getting good sleep can play a role in supporting your heart and... -
技術
見極める力を養う「チャットボットの精度」
【見極める力を養う「チャットボットの精度」】 ChatGPTをはじめ、チャットボットの精度は人が書いたものかどうかわからない程までの水準になっています。 The most rec...
-
人体・脳
なぜタイピングより手書きの方が、記憶に定着するのか
【なぜタイピングより手書きの方が、記憶に定着するのか】 ノルウェー科学技術大学の研究によると、手書きの方が物事をよく覚えることが判明しました。 様々なコンピュ... -
社会
どんな曲が好き?「 音楽の好みと性格の関連性は普遍的 」
【どんな曲が好き?「 音楽の好みと性格の関連性は普遍的 」】 激しい音楽を好んで聴く人は、激しい性格の持ち主なのでしょうか?研究者は、音楽の好みと性格の関連性は... -
人体・脳
視覚と意思決定領域の結びつきが強い「鮮明なイメージ能力がある人」
【視覚と意思決定領域の結びつきが強い「鮮明なイメージ能力がある人」】 鮮明にイメージできる人は、視覚ネットワークと意思決定に関連する脳の領域が強く結びついてい...
News
- 新着記事 -
Popular
- 人気記事 -
H A P P I N E S S幸 福
人気 (❁´ω`❁)
M E A L食 事
B R A I N脳
人気 (❁´ω`❁)
H E A L T H健 康
人気 (❁´ω`❁)
-
社会
自制心が健康と若さをもたらす理由
【自制心が健康と若さをもたらす理由】 デューク大学の研究チームは、自制心が心身に及ぼす影響を調査しました。 1000人を出生から45年間に渡って追跡した大規模調査で... -
人体・脳
健康な脳を保ち老化を遅らせる「アマゾンの先住民族ツィマネ族の生活習慣」
【健康な脳を保ち老化を遅らせる「アマゾンの先住民族ツィマネ族の生活習慣」】 ボリビア・アマゾンの先住民族であるツィマネ族が、アメリカやヨーロッパの人々に比べて... -
健康
高強度インターバルトレーニングは、適度な運動よりも心臓を強化する
【心臓を強化する高強度インターバルトレーニング】 ノルウェー科学技術大学の研究によると、トレーニングの強度が、病気の重症度を軽減し、心臓機能を改善し、作業能力...
-
社会
自制心が健康と若さをもたらす理由
【自制心が健康と若さをもたらす理由】 デューク大学の研究チームは、自制心が心身に及ぼす影響を調査しました。 1000人を出生から45年間に渡って追跡した大規模調査で... -
人体・脳
健康な脳を保ち老化を遅らせる「アマゾンの先住民族ツィマネ族の生活習慣」
【健康な脳を保ち老化を遅らせる「アマゾンの先住民族ツィマネ族の生活習慣」】 ボリビア・アマゾンの先住民族であるツィマネ族が、アメリカやヨーロッパの人々に比べて... -
健康
高強度インターバルトレーニングは、適度な運動よりも心臓を強化する
【心臓を強化する高強度インターバルトレーニング】 ノルウェー科学技術大学の研究によると、トレーニングの強度が、病気の重症度を軽減し、心臓機能を改善し、作業能力...
J O B仕 事
人気 (❁´ω`❁)
-
社会
週休4日制で生産を維持する
-
人体・脳
アイデアや閃きが降りてくる「横断的なコミュニケーション」
-
社会
大災害を読み解く鋭い解決策
-
思考・瞑想
賞や表彰が発明家の創造性を低下させる
-
人体・脳
創造的な人はここが違う!「非創造的なハブを回避し非典型的なアプローチをする」
-
社会
アメリカ陸軍で既に多数の成功を収めている「人々を創造的にするトレーニング」
-
社会
2年は普及しない?「カテゴリーイノベーション戦略」
-
社会
管理者級以上必見「創造性を引き出す同僚間の友情とサポートを育む組織づくり」
-
社会
アイデアを創出する人数「少人数のグループのほうが新しいアイデアが出やすい」
-
健康
散った気を元の集中に戻す「1日最大50%費やす迷いを断つマインドフルネス」
-
社会
移動によるエネルギーが激減「環境に優しく誰でも参加できるオンライン会議」
-
社会
山火事コスト数十億ドルのコスト削減「インドネシアの泥炭地回復」
-
社会
価格末「99円」設定が販売者に不利益を及ぼす驚愕の理由
-
社会
購買意欲を掻き立てる商品提示方法
-
社会
「感情的異質性」がチームの創造性を高める
-
社会
従業員の創造性を高める驚愕の方法「報酬を選択制にする」
-
社会
テクノロジーの力でセレンディピティを生み出す
-
社会
様々なテーマの問題への取り組みにつながる「ダ・ヴィンチ構想」
-
社会
改善が必要な状況に「やめる」という解決策がでない理由
-
社会
空想が苦手な理由と、その修正方法
-
学習
パズル解きの極意、最良の選択より優れた驚愕の方法
-
社会
大麻が独創的で実現不可能なアイデアを創出するという実験結果
-
社会
記憶に残るユーモアを含んだニュース
-
社会
なぜメッセージと画像が一致してない情報は伝わらないのか
-
社会
消費者を購買に結びつける音楽
-
技術
自動化工場などの緊急事態に備えて知識を生かしておく方法
-
社会
「生産性も顧客満足度も向上」プロジェクトに自主性を持たせる
-
人体・脳
人は1日に35,000回の意思決定をしている「意思決定を行うアルゴリズム」
-
社会
他文化と頻繁衝突する文化圏は協力的なゲームが流行?「ゲームからみる文化」
-
社会
「通勤はわるいもの?」モバイルセンシングで仕事の成果と通勤の関連性を解明
-
社会
テクノロジーは労働者の幸福度にどのような影響を及ぼすか
-
社会
雇用の創出ではなく雇用の置換が進む「ロボットなどの作業の自動化」
-
社会
「柔軟で弾力性のある対応が可能」生物系を模倣した多様なサプライチェーン
-
社会
「患者のメンタルヘルスケアを向上させる」患者と心理療法士のマッチング
-
学習
デジタルデバイス用に最適なフォント「AdaptiFont」
T E C H N O L O G Y技 術
人気 (❁´ω`❁)