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「極微細な運動を学習する」歌って覚える演奏に関する脳のメカニズム
歌を歌う、ギターを弾く、ピアノを奏でる、これらの演奏者は過去の記憶より技術を高速で想起させ、行動を起こしています。
歌う、奏でる等の脳のメカニズムの秘密に迫ります。
New research reveals that specialized cells within neural circuitry that triggers complex learning in songbirds bears a striking resemblance to a type of neural cell associated with the development of fine motor skills in the cortex of the human brain.
参照元:https://news.ohsu.edu/2021/11/19/scientists-key-in-on-brains-mechanism-for-singing-learning
– オレゴンヘルス&サイエンス大学 Oregon Health & Science University. November 19, 2021 –
鳴禽類の複雑な学習を誘発する神経回路内の特殊な細胞が、人間の脳の大脳皮質における微細な運動能力の発達に関連する神経細胞の一種に酷似していることが、新しい研究によって明らかになりました。
オレゴン健康科学大学の研究者らによるこの研究は、学術雑誌「Nature Communications」に掲載されました。
共同研究者であるOHSU Vollum研究所のシニアサイエンティスト、Henrique von Gersdorff博士は話します。
「雌がどの鳥と交尾したいかを選ぶことができるように、正確ではっきりとした雄の歌を持ちたい場合には、これらの特性が必要になります。これを生み出すには、高度に専門化した脳が必要です。」
OHSUのポスドク研究員であるベンジャミン・ゼメル博士は筆頭著者であり、脳の薄切片と単一細胞の記録を用いた困難な電気生理学的作業のほとんどを行いました。
今回の研究では、ある特定の神経細胞グループが、ナトリウムイオンチャネルタンパク質を調節する一連の遺伝子を発現していることが明らかになりました。
これらのイオンチャネルは、神経系の細胞間のコミュニケーションに用いられる電気信号を生成します。
今回のケースでは、この遺伝子群のおかげで、鳥が歌うときに神経細胞が極めて高い速度と周波数で反復的なスパイク(活動電位と呼ばれる)を発射することができます。
今回の研究では、0.2ミリ秒しか持続しない「超高速スパイク」について述べられています。
ミリ秒というのは、1秒の1000分の1という気の遠くなるような速さです。
さらに、今回の発見は、微細な運動制御を伴う人間の行動や発達のさまざまな側面におけるメカニズムを理解するための新たな道筋を示唆しています。
研究者らによると、ゼブラフィンチのオスの鳴き声に関与する神経細胞とイオンチャネルの集合体は、ヒトの脳の一次運動野にあるベッツ細胞と呼ばれる同様の神経細胞の集合体によく似ているそうです。
ベッツ細胞は、人間の脳細胞の中でも最も大きい細胞で、長くて太い軸索を持ち、スパイクを非常に高い速度と周波数で伝播することができます。
そのため、手や足、指、手首などの細かい運動に重要な役割を果たしていると考えられています。
共同研究者のクラウディオ・メロ博士(OHSU医学部行動神経科学教授)は話します。
「ピアノを弾く人を思い浮かべてみてください。彼らはとても速く思考しているので、学習して保存された記憶や行動に頼らなければなりません。ギターを弾くのも同じことです。」
今日発表された研究は、OHSUのマーカム・ヒル・キャンパスにあるマッケンジー・ホール・カフェでの昼食時に交わされた非公式な会話の結果です。
行動神経科学者であるMello氏は、ゼブラフィンチを動物モデルとして使用しており、von Gersdorff博士とは20年来の付き合いです。
ある日、カフェテリアで昼食をとりながら、Mello氏はノートパソコンを開き、歌えるようになる前の若いオスのゼブラフィンチの脳の画像と、歌えるようになった後に出現したタンパク質のサブユニットを示す画像を見せました。
電気生理学や神経細胞の生物物理学の専門家であるvon Gersdorff博士は話します。
「わずか数日の間に、何か驚くべきことが起こっていたのです。私は、これはまさに私たちがネズミの聴覚系で研究してきたタンパク質だと思いました。これは、私たちがネズミの聴覚系で研究していたタンパク質とまったく同じで、高周波のスパイクを促進します。」
Mello氏は、今回の研究により、細かい運動技能の学習に関わるメカニズムについての科学的理解が深まったと述べています。
「このモデルは非常に重要なモデルであり、今回の研究は幅広い可能性を秘めていると思います。」
von Gersdorff氏とMello氏は、3億年以上前に分岐した種で同じ運動回路の特性が共有されていることが、今回の発見の強さを物語っていると述べています。
研究者たちは、ゼブラフィンチのオスに発見された神経細胞の特性は、収斂進化によってスピードと精度に最適化されるようになったのではないかと述べています。
また、接続がうまくいかないときに関与する可能性のあるメカニズムも示唆しています。
von Gersdorff博士は話します。
「このベッツ細胞に影響を与える遺伝子変異の中には、学習によって克服できる吃音などの比較的軽度な影響を引き起こすものがある一方で、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの進行性疾患に関与するような、より顕著な影響を与える変異がある可能性があります。」


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