
新着記事
遺伝子に長期的な影響を与える「幼少期の体験」
幼少期の体験が遺伝子に長期的な影響を与える可能性が示唆されています。
Early life experiences can impact the activity of our genes much later on and even affect longevity, finds a new study in fruit flies led by UCL researchers.
参照元:https://www.ucl.ac.uk/news/2022/dec/early-life-experiences-can-have-long-lasting-impact-genes
– ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン University College London. 1 December 2022 –
幼少期の経験が、その後の遺伝子の活動に影響を与え、さらには長寿にも影響することが、UCLの研究者を中心としたミバエを用いた新たな研究で明らかになりました。
Nature Aging誌に掲載されたこの研究では、遺伝子発現の「記憶」が寿命を通じて持続し、晩年の健康を改善するための新たなターゲットとなり得ることが報告されています。
筆頭著者のNazif Alic博士(UCL Institute of Healthy Ageing, UCL Biosciences)氏は話します。
Alic博士:高齢期の健康は、若い頃、あるいは胎内で経験したことに部分的に依存します。若い頃の遺伝子発現の変化が、半生以上後の健康に影響を与える「記憶」を形成することができるのです。
科学者達は、生後間もない時期に高糖質食を与えられたミバエが、大人になって食生活を改善しても、短命であることを発見した、彼らの以前の研究に基づいています、そして今回、そのメカニズムを明らかにしました。
研究チームは前回の研究で、高糖質食が、長寿に影響することが複数の研究で知られている糖代謝にかかわるdFOXOという転写因子を阻害することを発見し、今回、dFOXOの活性を直接高めることで逆の効果を実現しようと考えました。
転写因子は、DNAからメッセンジャーRNAへの情報の転写(コピー)を制御するタンパク質であり、遺伝子発現の最初の重要なステップです。
今回、研究チームは、メスのミバエが成虫になってから3週間の間に、dFOXOの濃度を高めて活性化させました。
その結果、こうした初期段階での経験が、クロマチン(DNAとタンパク質の混合物で、DNAの「包装」ともいえる)に変化をもたらし、それが持続することで、後期にも遺伝子の発現が異なることが判明しました。
この変化は、通常の加齢過程で予想される変化を打ち消し、最終的には晩年の健康状態を改善するとともに、1カ月以上後のミバエの寿命(ミバエの寿命の半分)にも影響を与えたという。
研究者らは、今回の発見が、人間の後期高齢者の健康にも影響を与える方法につながる可能性があるとしています。
Alic博士:動物や人の一生の初期に起こったことは、良くも悪くも、その遺伝子の後期の働きに影響を与えることがあります。例えば、人生の初期に貧しい食生活を送っていると、たとえ長年にわたって食生活を大きく変えたとしても、遺伝子の発現に影響を及ぼし、後世の代謝に影響を及ぼす可能性があります。
遺伝子発現の記憶が、どのように生涯にわたって持続して、遺伝子活性に影響を与えるかがわかったので、我々は、健康を維持し、人々がより長く健康でいられるようにするために、人生の後半でこれらの変化に対抗する方法を開発することができるかもしれません。
この研究は、バイオテクノロジー・生物科学研究評議会と医学研究評議会の支援を受け、UCL、グラスゴー大学、インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者が参加しています。
UCL Institute of Healthy Ageingでは、加齢に伴う病気の原因を解明し、高齢者の健康を改善するために、加齢の生物学的メカニズムの解明を目指しています。
最近の研究では、人間の寿命延長につながる遺伝子を特定したり、併用薬治療によりミバエの寿命を48%延長するなどの成果を上げています。


この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!
関連記事
新着記事
-
行動障害を引き起こす慢性的なストレス2023.01.29人体・脳
-
機嫌で変わる言語処理2023.01.28人体・脳
-
若々しさを促進する「運動」2023.01.27健康
-
免疫機能の低下「夫婦不仲」2023.01.26健康
-
食よりも効果のある「総摂取カロリーを減らす」2023.01.25健康
-
腸を守る「教育」2023.01.24健康
-
歩行や自転車を楽しむ人の特徴「自分の住んでいる地域が好き」2023.01.23健康
-
出生率の低下は「子供を持ちたいという願望の減少」ではない2023.01.22社会
-
うつ病リスク軽減「他者からのサポート」2023.01.21健康
-
メラノーマの発症が少ない「ビタミンD定期摂取者」2023.01.20健康
よく読まれている記事
N E W S & P O P U L A R最 新 記 事 & 人 気 記 事
WHAT'S NEW !!
-
行動障害を引き起こす慢性的なストレス
【行動障害を引き起こす慢性的なストレス】 慢性的なストレスは快楽を喪失させ、抑うつなどの行動障害を引き起こすようです。 It's clear that chronic stress can impa... -
機嫌で変わる言語処理
【機嫌で変わる言語処理】 気分が悪い時、言語処理にどのような影響があるかアリゾナ大学の研究者たちが調査しました。 When people are in a negative mood, they may ... -
若々しさを促進する「運動」
【若々しさを促進する「運動」】 運動は若々しさを促進することを裏付ける研究結果が発表されました。 A recent paper published in the Journal of Physiology deepene... -
免疫機能の低下「夫婦不仲」
【免疫機能の低下「夫婦不仲」】 「夫婦は似てくる」と日本では言われていますが、コミュニケーションが不良である夫婦は免疫脳低下などの特徴が見られたようです。 A t...
-
なぜタイピングより手書きの方が、記憶に定着するのか
【なぜタイピングより手書きの方が、記憶に定着するのか】 ノルウェー科学技術大学の研究によると、手書きの方が物事をよく覚えることが判明しました。 様々なコンピュ... -
大面積有機フォトダイオードに置き換わる?「シリコンフォトダイオード技術」
【大面積有機フォトダイオードに置き換わる?「シリコンフォトダイオード技術」】 ダイオードと言うのは、光検出器の事で光が入射されるとエネルギーを生むというデバイ... -
「世界最長寿記録を更新し132歳まで生きる人が出現する」ベイズ統計学予測
【「世界最長寿記録を更新し132歳まで生きる人が出現する」ベイズ統計学予測】 ベイズ統計学を用いると、最長寿記録122歳という世界記録はほぼ確実に破られ、125歳から1...
News
- 新着記事 -
Popular
- 人気記事 -
H A P P I N E S S幸 福
人気 (❁´ω`❁)
M E A L食 事
B R A I N脳
人気 (❁´ω`❁)
H E A L T H健 康
人気 (❁´ω`❁)
-
人体・脳
健康な脳を保ち老化を遅らせる「アマゾンの先住民族ツィマネ族の生活習慣」
【健康な脳を保ち老化を遅らせる「アマゾンの先住民族ツィマネ族の生活習慣」】 ボリビア・アマゾンの先住民族であるツィマネ族が、アメリカやヨーロッパの人々に比べて... -
健康
高強度インターバルトレーニングは、適度な運動よりも心臓を強化する
【心臓を強化する高強度インターバルトレーニング】 ノルウェー科学技術大学の研究によると、トレーニングの強度が、病気の重症度を軽減し、心臓機能を改善し、作業能力... -
人体・脳
満腹感を抑制するリポカリン-2(LCN2)
【満腹感を抑制するリポカリン-2(LCN2)】 リポカリン-2(LCN2)ホルモンの摂取により、食物摂取を抑制し満腹度が高まる事は、マウス実験で知られていましたが、ヒト科...
-
人体・脳
健康な脳を保ち老化を遅らせる「アマゾンの先住民族ツィマネ族の生活習慣」
【健康な脳を保ち老化を遅らせる「アマゾンの先住民族ツィマネ族の生活習慣」】 ボリビア・アマゾンの先住民族であるツィマネ族が、アメリカやヨーロッパの人々に比べて... -
健康
高強度インターバルトレーニングは、適度な運動よりも心臓を強化する
【心臓を強化する高強度インターバルトレーニング】 ノルウェー科学技術大学の研究によると、トレーニングの強度が、病気の重症度を軽減し、心臓機能を改善し、作業能力... -
人体・脳
満腹感を抑制するリポカリン-2(LCN2)
【満腹感を抑制するリポカリン-2(LCN2)】 リポカリン-2(LCN2)ホルモンの摂取により、食物摂取を抑制し満腹度が高まる事は、マウス実験で知られていましたが、ヒト科...