Tweet

Pocket

「現実に起きている事象を正確に認識していない」人間とマウスの触覚

マウスと人間の触覚反応は、振動の振幅が変化しても、脳がその変化を確実に認識していないようです。
現実世界と脳が捉えている世界の乖離が証明されました。

By studying how mice and humans perceive tactile vibrations, the brain does not reliably perceive the frequency of a vibration when its amplitude varies.

参照元：https://www.unige.ch/communication/communiques/en/2021/comment-les-vibrations-creent-lillusion/
– ジュネーヴ大学 Université de Genève. September 23, 2021 –

人間の伝統的な五感のうち、触覚はおそらく最も研究されていません。

しかし、触覚はいつでもどこでも求められており、近年では振動を発する電子機器が日常的に普及しているため、なおさらです。

実際、動いている物体からは振動信号が発信され、それが固体の基板を伝わっていきます。

私たちの体は、聴覚、嗅覚、視覚などの刺激と同様に、皮膚の下にある機械受容器によってこれを感知し、脳に情報を伝達しています。

ジュネーブ大学（UNIGE）とフリブール大学（UNIFR）の研究者たちは、マウスと人間が触覚振動をどのように認識するかを研究し、振動の振幅が変化した場合、脳は振動の周波数を確実には認識しないことを発見しました。

これにより、私たちの世界に対する認識が物理的な現実からいかに乖離しているかを示す、幻想的な現象が生じました。

本研究成果は、Nature Communications誌に掲載されています。

振動とは、ある平衡点から発せられる小さな振動運動のことです。

固体の中を波のように伝播することで、ほとんどの生物が知覚することができます。

振動は、変化の度合いを表すHz（1秒間の繰り返し回数）と、波が到達できる最大の大きさ、すなわち強度に相当する振幅という、2つの主要な特徴によって定義されます。

本研究を主導したUNIGE医学部基礎神経科学科のダニエル・フーバー教授は話します。

「例えば、携帯電話が振動すると、その振動は、周波数が速くなったり遅くなったり、また、振幅が大きくなったり小さくなったりします。私たちの脳は、これらの物理的特性をどのように解釈しているのでしょうか？今回の研究では、この疑問に答えることを目的としました。」

マウスと人間で同一の知覚を実現

そこで、マウスのグループと人間のグループに同じ実験を行ったところ、手や足に感じる複数の振動周波数を区別しなければならなくなりました。

本研究の筆頭著者であるUNIFR理学部神経科学科のMario Prsa教授は話します。

「マウスはより高い周波数（約1000Hz）に敏感であるのに対し、人間の感度はより低い周波数（約250Hz）に最適であることがわかりました。しかし、マウスでも人間でも、振幅が一致しないと、低い周波数と高い周波数の区別がつきにくくなります。つまり、物理的に異なる周波数であっても、知覚的には区別がつかないメタマーを作り出すことができるのです。これは非常に驚くべきことです。」

この錯覚は、最も感度の高い周波数（人間は250Hz、マウスは1000Hz）よりも高い、あるいは低い周波数は、振幅を大きくすると、その周波数に近いと感じられるという単純な原理に基づいています。

この状態では、高い周波数の振動（例：500Hz）は実際よりも低く見え、好みの周波数よりも低い周波数の振動（例：150Hz）は高く見えます。

Prsa教授は話します。

「この心理物理学的錯覚に陥ると、脳は自分が最もよく知っているものに焦点を合わせ直すことで、誤った認識をしてしまうのです。このような現象は、聴覚のような他の感覚にも見られます。私たちの知覚は、非常に小さい音量や大きい音量に惑わされることがあり、音の実際の物理的属性を表すことはほとんどなく、いくつかの刺激の特性の複合的な特徴を表しています。」

いまだに謎の多い現象

このような錯覚は、どのようにして、そしてなぜ私たちの脳の中で作られるのでしょうか。

ダニエル・フーバー教授は話します。

「この疑問こそが、私たちが現在進めている研究のテーマです。具体的には、どの瞬間に脳が触覚刺激を正しく解釈できなくなるのか、ニューロンレベルでは何が起きているのか。そして、なぜマウスや人間のような異なる種が同じように誤認するのでしょうか？」

ダニエル・フーバー教授のチームは、このテーマをさらに掘り下げ、聴覚障害者のボランティアや音楽家の協力を得て、音楽作品を触覚刺激の範囲に移すことで、聴覚障害者がどのように音楽を知覚できるかを研究しています。

Tweet

Pocket