ヒ素を介した皮膚がんリスクを低減するビタミンD3

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ヒ素を介した皮膚がんリスクを低減するビタミンD3

活性化ビタミンD3が水道水中に含まれる有害なヒ素の影響から身を守るかもしれません。

Exposure to arsenic has previously been associated with the development of various cancers including skin cancer.

参照元:https://www.shibaura-it.ac.jp/en/news/nid00002871.html
– 芝浦工業大学 Shibaura Institute of Technology. 13 Dec. 2022 –

世界中の何百万人もの人々が、ヒ素に汚染された水を定期的に摂取しています。

ヒ素への曝露は、これまで、皮膚がんを含むさまざまながんの発症に関連していました。

しかし、ヒ素を介した発がんを制御する分子メカニズムに関する研究は、まだほとんど行われていません。

このたび、日本の研究者らは、カルシトリオール(活性型ビタミンD3)が、ケラチノサイトと呼ばれる特定の種類の皮膚細胞において、ヒ素を介した発がんを抑制することを試験管内試験により明らかにしました。

最近の推定によると、50カ国から1億4千万人以上の人々が、飲料水を通して定期的にヒ素にさらされているとのことです。

これは、世界保健機関(WHO)が定めるガイドライン値(10μg/L)を大幅に超える値です。

飲料水による砒素の慢性的な曝露は、皮膚癌を含む様々な癌を引き起こすことが知られています。

しかし、ヒ素を介した発がんを制御する生物学的メカニズムに関するデータは、残念ながら一般にあまり多くありません。

また、ヒ素による発がんを予防・治療する方法についても、これまで不明な点が多く残されていました。

このたび、芝浦工業大学と名古屋大学の研究者らは、発がん抑制の基礎となる生物学的メカニズムを明らかにすることに成功しました。

研究チームは、in vitro試験によって、カルシトリオール(活性型ビタミンD3)が、「ケラチノサイト」と呼ばれるある種の皮膚細胞において、ヒ素を介した発がんを抑制することを明らかにしました。

この細胞は、主に皮膚の一番外側の層である表皮に存在します。

ある種のシグナル伝達分子、すなわち、さまざまな生物学的プロセスの運命を制御するキナーゼタンパク質(例えば、MEKや「AKT」)が、腫瘍の発生と強く関連しているということは、科学的に確立された事実です。

研究チームを率いるSIT生命理工学部分子細胞毒性学ユニットの矢島一郎教授は話します。

矢島教授:ヒトの非腫瘍性HaCaT皮膚ケラチノサイトを用いたin vitro試験で、カルシトリオールが、活性型ビタミンDとして知られていることが分かりました。MEK、ERK1/2、AKTなどの複数のシグナル伝達経路の活性化や細胞周期の活性化を抑制し、ヒ素を介したアンカレッジ非依存性増殖を阻害することが明らかになりました。

ヒ素の取り込みとカルシトリオール処理の関係を明らかにするために、研究者達は、誘導結合プラズマ質量分析計を用いて、カルシトリオールで処理した長寿命の自然不死化ヒト表皮角化細胞であるHaCaT細胞中のヒ素レベルを測定しました。

興味深いことに、ヒ素を添加して培養したHaCaT細胞をカルシトリオールで処理すると、ヒ素濃度が有意に減少したのです。
この研究結果は、『American Journal of Cancer Research』誌に掲載されました。

本研究の共同研究者である名古屋大学産業環境保健学部教授の加藤雅史博士は話します。

加藤博士:カルシトリオールは、ヒ素曝露により変化したアクアポリン遺伝子(AQP7、9、10)の発現を制御することにより、HaCaT細胞におけるヒ素の取り込みを著しく抑制しました。ビタミンD受容体の発現は、ヒ素曝露により有意に増加したが、カルシトリオールは受容体の発現に影響を及ぼさなかった。

そこで研究チームは、カルシトリオールが皮膚角化細胞以外の細胞でもヒ素による腫瘍形成を抑制する効果があるかどうかを調べようとしました。

そこで、ヒト正常肺上皮細胞株「Beas-2b」を用いて、アンカレッジ非依存性増殖アッセイを実施しました。

カルシトリオールで処理したBeas-2b細胞は、ヒ素を介したアンカレッジ非依存性増殖を21.4〜70.0%抑制したのです。

矢島教授:これらの結果は、カルシトリオールがケラチノサイトだけでなく、肺上皮細胞など他の標的細胞でもヒ素による腫瘍形成を抑制することを示唆しています。

さらに、ヒ素による発がんにおいて重要なステップであるヒ素の取り込みに関与するアクアポリン遺伝子の発現パターンが、カルシトリオール処理によって大きく変化していることも確認されました。

したがって、活性化ビタミンD3、すなわちカルシトリオールは、癌を含むヒ素を介した疾患の予防や治療に貢献する可能性があると考えています。

ヒ素などの環境毒は、癌などの生命を脅かす疾患の発症に大きく寄与しています。

しかし、ヒ素に汚染された水を飲んで癌になるには、何年も、何十年もかかる場合があります。

今回の研究により、カルシトリオールは、活性型ビタミンD3やその類縁体がヒ素を原因とするがんの予防や治療に安全かつ有効であることを検証するための被験物質として使用できることが明らかになりました。

ヒ素汚染地域であらかじめビタミンD3を摂取しておけば、5年後、10年後のがん発症リスクを低減し、長期にわたって健康を維持できる可能性があります。

これは、世界中で汚染された水で生きることを余儀なくされている何百万人もの人々にとって、確かに歓迎すべきニュースです。

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