長期記憶に重要な役割を果たす海馬は短期記憶も支えている

長期記憶に重要な役割を果たすことで知られる海馬は、短期記憶も支えているようです。

Now a new Northwestern Medicine study has found the hippocampus also plays a role in short-term memory and helps guide decision-making.

参照元：https://news.northwestern.edu/stories/2021/06/memory-helps-evaluate-situations-on-the-fly/?fj=1
– ノースウェスタン大学 Northwestern University.

脳の海馬が長期記憶に重要な役割を果たしていることは、以前から知られていました。

今回、ノースウェスタン医学研究所の研究により、海馬が短期記憶にも関与し、意思決定にも役立っていることが明らかになりました。

この研究結果は、海馬が記憶や探索にどのように貢献しているかを明らかにするもので、記憶に関する老化や認知症などの神経変性疾患で影響を受けている海馬の機能を回復させる治療法につながる可能性があるそうです。

今回の研究では、複雑な絵を見ているときの被験者の脳活動をモニターし、眼球運動を追跡しました。

その結果、私たちが周囲の環境を視覚的にスキャンして新しい情報を吸収すると、海馬が活性化し、短期記憶を使って新しい視覚情報をうまく処理し、状況を迅速に再評価することができることがわかりました。

通りを歩いていて、隣家の芝生に不自然に駐車している車に気付いたとします。

あなたはすぐにそれを無視して先に進みます。

しかし、救急車や消防車が近づいてくるのを見て、点と点が結びつき、振り返って事故の現場を確認します。

海馬は、短期記憶を使って見る場所を誘導することで、車を再確認し、事故の記憶を永続的に形成することができます。

ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部のポスドク研究員であるJames Kragelは話します。

「脳は、普段は意識していないような眼球運動を、ある瞬間に素早く開始しています。我々の発見は、海馬が記憶を使って目の位置を知らせ、それによって視覚システムが学習し、その場で環境を再評価するように仕向けていることを示唆しています。」

「もしあなたが振り返って事故を見なければ、その重要な情報は符号化されないかもしれませんが、短期記憶の検索を使えば、それらの手がかりを結びつけて、より大きな記憶の手がかりとなる詳細を思い出すことができます。このように、異なる要素を結びつけることで、より簡単に記憶することができるのです。」

本研究は、2021年6月18日に学術誌「Science Advances」に掲載される予定です。

フェインバーグ大学の医療社会科学、神経学、精神医学・行動科学の准教授であるJoel Voss氏は話します。

「今回の研究成果は、海馬に依存した記憶は一般的に過去のものと考えられていますが、実際には、私たちの行動や意思決定を最適化するために瞬間的に作動していることを強調しています。このことは、海馬の機能を理解し、記憶障害の効果的な治療法を開発するための鍵となります。」

Kragel氏は話します。

「あたかもあなたが記憶を使って期待することを計画しているかのように、それが実際に展開していることと不一致になると、海馬が活性化されて、現在起こっていることについてのあなたの認識を再評価して更新するのです。」

この研究は、発作の原因を特定するためにノースウェスタン・メモリアル病院で脳外科的なモニタリングを受けているてんかん患者を対象に行われました。

患者の脳には、発作に関連する脳活動をマッピングするための電極が埋め込まれていました。

参加者は、てんかんモニタリングユニットに滞在中、複数の人や物が登場する複雑な場面（例：公園のベンチに座っている人、テーブルの上の食べ物、背景で起こっていることなど）のリストを学習する記憶課題を行い、その後、記憶テストを行いました。

テストでは、被験者は提示された場面が古いものか新しいものかを指示しました。

タスク中、著者らは眼球運動と神経活動を同時に記録し、海馬の活動と記憶を誘導する行動を関連付けた。

被験者は、ある場面を初めて見るとき、数百ミリ秒前に見た場所に視線を戻すことが多かったのです。

このような「再訪」の眼球運動は、シーンの時空間記憶（物体の位置や出来事の順序を記憶すること）を高めます。

また、「再訪」の実行直前に海馬の活動が変化したことから、「再訪」の生成に関わる脳内ネットワークが明らかになりました。

また、「再訪」の後にも脳の活動が増加していることから、場面とその要素に関する永続的な記憶が形成されているのではないかと考えられています。

Voss氏は話します。

「この結果は、海馬の記憶への貢献が、進行中の行動の中でわずか数百ミリ秒の間に展開されることを示しています。通常、長期記憶の検索に見られる海馬の関与の時間経過が数日から数年と考えられていることを考えると、驚くべきことです。」