人と目を合わせると時間的な知覚に歪みが生じ「強力な注意喚起を促す」

アイコンタクトは社会のコミュニケーションにとって重大な役割を持っています。ジュネーヴ大学の研究チームは、アイコンタクトが及ぼす生理的反応を調査しました。人と目を合わせると、私たちの注意が直接促され、時間的な知覚に歪みが生じることがわかりました。

To assess these results, the UNIGE researchers carried out the same experiment with other participants, using non-social objects that made the same movements as the gaze. In that case, no distortion of time perception was observed. The same was true when a face was static. 

参照元：https://www.unige.ch/communication/communiques/en/2021/notre-attention-captivee-par-un-regard/
– ジュネーヴ大学 Université de Genève.  April 20, 2021 –

目は、対話者の意図を表現することで、社会的コミュニケーションにおいて重要な役割を果たしています。

顔の半分が隠れてしまうパンデミック時には、なおさらです。

しかし、このアイコンタクトは、自動的かつ迅速なものなのでしょうか？

このアイコンタクトは、優先的な注意反応に基づいているのでしょうか、それとも逆に、特定の感情反応に基づいているのでしょうか？

これらの疑問に答えるため、スイスのジュネーブ大学（UNIGE）の研究者たちは、社会的相互作用の時間的持続性の推定に焦点を当てて、人間の視線の処理方法を調べました。

その結果、人と目を合わせると、私たちの注意が直接促され、時間的な知覚に歪みが生じることがわかりました。

その結果、時間が実際よりも短く感じられるのです。

逆に、このような時間の過小評価は、非社会的な対象を見ているときには起こりません。

この研究成果は、Cognition誌に掲載されます。

社会的な視線に敏感な人のメカニズムを評価する診断ツールを開発し、自閉症や統合失調症など、社会的刺激の処理に障害があることが判明した場合に、それに応じた対応が可能になると考えられます。

他人への視線や他人の視線の受け止め方は、社会的コミュニケーションに大きな影響を与えるもので、社会的認知と呼ばれる基本的な機能です。

本研究の筆頭著者であるUNIGE心理学・教育科学部（FPSE）心理学セクションの研究者Nicolas Burra氏は話します。

「私たちは幼い頃から、相手の目を通して相手の気持ちや意図を読み取ることを学びます。誰かの視線に出会うことは、ごくありふれた社会的状況ですが、それは常に特定の感情につながっています摘します。この状況を説明するために、2つの仮説が提唱されています。1つは、他人とのアイコンタクトは、私たちの注意を通さずに、直接、感情的な反応を引き起こすというものです。2つ目の仮説は、アイコンタクトが迅速かつ自動的な注意の処理を活性化し、それがその後の感情的反応を生み出すというものです。」

感情と注意が影響する時間の認識

これらの仮説を検証するために、UNIGEの研究者たちは、私たちが時間をどのように認識しているかを調べました。

それは、視覚刺激に対する感情や注意の処理によって変化します。

Nicolas Burra氏は説明します。

「例えば、大きなクモが現れた時の時間を評価するよう求められた場合、私たちは経過する時間を過大評価し、実際よりも早く流れているような印象を与えることがわかっています。」

「このように、私たちの時間を評価する能力は、感情的なチャージによって妨害され、加速してしまうのです。逆に、視覚刺激が注意によって処理される場合は、逆の効果が生じます。私たちは、注意にとって非常に重要な刺激に集中することで、経過する時間を過小評価し、想像以上に長く対象物を見てしまいます。」

ジュネーブ在住の研究者は話します。

「人が対象物を見ていたと推定する時間を分析することで、2人の間のアイコンタクトが、注意を求めるものなのか、感情を求めるものなのかを判断することができます。」

逸脱した視線とアイコンタクト

アイコンタクトが時間の認識に与える影響を評価するため、22人の被験者は、一連の約300人の顔の視線の動きを観察しました。

直接のアイコンタクトを確立する視線（目が空洞を見てから参加者の視線を捕らえる）と、逸脱した視線（同じ目の動きをするが、顔と参加者の視線が合わない）です。

参加者は20分間にわたり、これらの社会的相互作用の持続時間の違い（日常的な社会的相互作用に近い1～2秒の間）を主観的に評価しました。

Nicolas Burra氏は話します。

「視線がずれていても時間の認識が歪むことはありませんが、逆に視線が交差していると、被験者はこれらのアイコンタクトの持続時間を体系的に過小評価することがわかりました。」

この実験により、アイコンタクトは主に感情システムに影響を与えるのではなく、時間を評価する能力から目をそらす注意システムに影響を与えることが明らかになりました。

この結果を評価するために、UNIGEの研究者たちは、視線と同じ動きをする非社会的な物体を使って、他の参加者で同じ実験を行いました。

その場合、時間知覚の歪みは観察されませんでした。

また、顔が静止している場合も同様でした。

「視線だけでなく、動きも必要なようです」と神経科学者は指摘します。

しかし、時間の歪み効果は、模式的な目の動きだけを見せたり、顔の他の部分を見せずに目の一部だけを動かしたりした場合にも見られました。

さらに、この効果は、100人を対象としたオンライン実験でも確認され、実験室で得られた結果を裏付け、一般化することができたのです。

アイコンタクトで注意を引く

一連の実験から、視線や社会的な刺激が、注意に優先的に影響を与えることがわかりました。

Nicolas Burraは説明します。

「このことは、まだ視線を合わせていないのに、誰かがこちらを見たときに感じる感覚を説明するものです。」

この研究により、自閉症や統合失調症、社会不安など、他人の視線に対する興味の欠如や視線の誤認、極端な情動反応などを特徴とする社会的刺激の処理に関する障害を持つ人々の注意や感情のプロセスを評価し、より正確に介入することが可能になります。

研究チームは現在、子供と高齢者を対象にこの実験を行っており、注意によるアイコンタクトの優先的な処理が生涯にわたってどのように変化するかを観察しています。

Nicolas Burra氏はまとめます。

「この研究は、他人の視線を受けると時間が止まるという感覚に意味を与えるものです。」