サーチュイン酵素の減少が心筋収縮を弱める影響

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サーチュイン酵素の減少が心筋収縮を弱める影響

加齢に伴う2つのサーチュイン酵素(SIRT1、SIRT3)の減少がミトコンドリアの動態を変化させ、心筋収縮を弱めるようです。サーチュインは、細胞の寿命、代謝、ストレスへの抵抗力などを調節するアンチエイジングタンパク質の一群です。

The potential protective effect of these sirtuin enzymes in age-related diseases, including cardiovascular diseases, remains an area of intense investigation.

参照元:https://hscweb3.hsc.usf.edu/blog/2021/08/20/age-related-decline-in-two-sirtuin-enzymes-alters-mitochondrial-dynamics-weakens-cardiac-contractions/
– 南フロリダ大学 University of South Florida .  August 20, 2021

サーチュイン酵素が、心血管疾患を含む加齢性疾患を予防する可能性については、現在も精力的に研究が行われています。

このたび、南フロリダ大学(USF Health)の研究者らが主導した前臨床試験において、サーチュイン1(SIRT1)およびサーチュイン3(SIRT3)のレベルが老化した心臓で低下し、心筋細胞(cardiomyocytes)が虚血再灌流傷害(再灌流傷害とも呼ばれる)に反応して収縮する能力が損なわれることが明らかになりました。

さらに、加齢に伴うSIRT1およびSIRT3の欠損は、代謝の健全性や炎症反応に重要な役割を果たしているミトコンドリアの動態を変化させることで、心機能を損なう可能性があるとのことです。

本研究成果は、Aging Cell誌のオンライン版に2021年7月3日に掲載されました。

研究代表者のJi Li博士(USF Health Morsani College of Medicine外科教授)は話します。

「加齢に伴うミトコンドリア動態の変化は、SIRT1/SIRT3の欠損によって、特に心筋細胞で引き起こされることを発見しました。心臓のミトコンドリアの働きを健全に保つためには、SIRT1とSIRT3がしっかりと存在している必要があります。そうでなければ、心臓のポンプ機能が弱くなってしまいます。」

ミトコンドリアは、生きている細胞のほぼすべてのプロセスを駆動するのに必要なエネルギーを生産します。

心臓は常に血液を全身に送り出すために大量のエネルギーを必要とするので、心筋細胞には他のどの細胞よりも多くのミトコンドリアが含まれています。

ミトコンドリアの動態が安定していると、ミトコンドリアの分裂と融合のバランスが保たれ、細胞の「発電所」と呼ばれる特殊な構造体の品質が確保されます。

急性心筋梗塞の治療でよく行われる再灌流は、冠動脈を塞いだ血栓によって損傷した心臓の部位に血流(ひいては酸素)を回復させます。

しかし、逆説的に、この血行再建術が、最初の心臓発作部位の周囲の心筋組織にさらなる損傷を引き起こす患者もいる。再灌流障害を予防する有効な治療法は現在のところ存在しません。

USFヘルスの研究者らは、虚血再灌流ストレスに対する心筋のミトコンドリアの反応を解析するために、マウスの心筋細胞のSIRT1またはSIRT3を削除し、血流制限による虚血ストレスに対するミトコンドリアの反応を調べました。

その結果、心筋細胞のSIRT3を欠いたマウスの心臓のミトコンドリアは、SIRT3がそのまま残っているマウスの心臓に比べて、再灌流ストレスに対して脆弱であることがわかりました。

これらのノックアウトマウスの心筋ミトコンドリアの動態(ミトコンドリアの形状、大きさ、構造など)は、心筋SIRT3を保持する高齢のワイルドタイプ(正常)マウスと生理的に類似していました。

さらに、SIRT1またはSIRT3を除去した若いマウスでは、心筋細胞の収縮力が著しく低下し、虚血再灌流ストレスを導入すると老化に伴う心臓機能障害を示しました。

つまり、SIRT1/SIRT3を除去した健康な若いマウスの心臓は、老いた心臓のように見え、行動したのです。

USFヘルス心臓研究所のLi博士は話します。

「この研究は、高齢者が若年者に比べて心臓発作の発生率が高く、最大限の治療を受けても死亡することが多い理由を解明するために始めました。若い人は、心臓発作から回復する可能性が高く、虚血再灌流障害を起こす可能性も低いのです。」

「私たちの研究では、その理由のひとつとして、SIRT1とSIRT3の両方が加齢に伴ってダウンレギュレートされることが考えられます。若い人は、ミトコンドリアのダイナミクスを健全にするために必要なこれらのタンパク質のレベルが高いのです。」

今回の研究では、高齢の患者さんが閉塞した冠動脈を手術で開いて血流を回復させる前に、低下したSIRT1/SIRT3レベルを「レスキュー」(改善)する治療を行うことで、心筋の再灌流ストレスに対する耐性が高まり、心筋梗塞の合併症や死亡率が減少する可能性が示唆されたとLi博士は述べています。

このような心筋保護治療には、SIRT1/SIRT3の産生量を増加させる遺伝子的なアプローチや、SIRT1/SIRT3を活性化させるアゴニスト(薬剤)を用いることが考えられるそうです。

今回のマウスモデルで得られた知見がヒトの心臓にも応用できるようになれば、Li博士のグループは、心臓発作に伴う再灌流障害を軽減するためのSIRT1/SIRT3活性化剤の開発・試験に関心のある企業と協力したいと考えています。

Li博士は、米国国立心肺血液研究所、米国国立老化研究所、米国国立総合医科学研究所からの助成を受けて研究を進めています。

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