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細胞死を抑制する「ビタミンK」
ビタミンKは細胞死を効率的に抑制するようです。
The researchers discovered that the fully reduced form of vitamin K acts as an antioxidant efficiently inhibiting ferroptotic cell death.
参照元:https://www.helmholtz-munich.de/en/aktuelles/latest-news/press-information-news/article/50687/index.html
– ヘルムホルツ・ミュンヘン Helmholtz Munich.
ヘルムホルツ・ミュンヘンの研究チームは、一般に血液凝固に重要であることが知られているビタミンKの新たな機能を報告しました。
研究チームは、ビタミンKの完全還元型が、フェロプトーシス細胞死を効率的に抑制する抗酸化物質として働くことを発見しました。
フェロプトーシスとは、細胞膜の酸化的破壊を特徴とする、細胞鉄が重要な役割を果たす自然な細胞死の一種です。
また、半世紀以上前から仮説はあったものの不明であった、ワルファリン非感受性ビタミンK還元酵素がFSP1であることも突き止めました。
近年、フェロプトーシスは、アルツハイマー病や急性臓器障害など、様々な疾患の原因となることが指摘されています。
今回の発見は、ビタミンKの投与がこれらのフェロプトーシス関連疾患を改善する新しい強力な戦略である可能性を提唱するものです。
ビタミンKは強力なフェロプトーシス抑制剤である
フェロプトーシスの抑制は、多くの変性疾患の治療法として有望視されているため、フェロプトーシスを制御する新しいメカニズムや化合物の探索が広く行われています。
ヘルムホルツ・ミュンヘン代謝・細胞死研究所の三島栄冠博士とマーカス・コンラッド博士を中心とする研究チームは、東北大学、オタワ大学(カナダ)、ドレスデン工科大学(ドイツ)の協力のもと、多くの天然ビタミンとその誘導体を系統的に研究し、フェロプトーシスを制御する新しい分子を特定することに成功しました。
この研究の筆頭著者である三島栄冠博士は話します。
三島栄冠博士:驚くべきことに、フィロキノン(ビタミンK1)とメナキノン4(ビタミンK2)を含むビタミンKが、フェロプトーシス状態にある細胞や組織を効率的に救済できることを突き止めました。
長い間探し求めていたビタミンK還元酵素FSP1の解明に成功
2019年、マーカス・コンラッド博士を中心とする研究チームは、フェロプトーシスの新規かつ強力な阻害剤となる酵素、フェロプトーシス抑制タンパク質-1、略してFSP1をすでに同定していました。
今回、研究チームは、ビタミンKの完全還元型(すなわちビタミンKハイドロキノン)が強い親油性抗酸化剤として働き、脂質二重膜に酸素ラジカルを捕捉してフェロプトーシスを抑制することを発見しました。
さらに、FSP1がビタミンKを効率よくビタミンKヒドロキノンに還元する酵素であることを突き止め、新規の非正規型ビタミンKサイクルを駆動していることを明らかにしました。
さらに、ビタミンKは血液凝固に深く関与していることから、FSP1は抗凝固剤として最もよく処方されるワルファリンに対して非感受性であるビタミンK還元経路を担っていることを明らかにしました。
ビタミンK代謝の解明にブレークスルー
この酵素の正体を解明することで、血液凝固におけるビタミンK代謝の最後の謎が解け、なぜビタミンKがワルファリンの過剰投与に対する解毒剤となるのか、その分子メカニズムが明らかになりました。
Marcus Conrad博士は話します。
Conrad博士:今回の成果は、フェロプトーシス研究とビタミンKの生物学という2つの世界を結びつけるものです。フェロプトーシスが関与する疾患の新たな治療法開発の足がかりとなるでしょう。
また、フェロプトーシスは最も古いタイプの細胞死の1つである可能性が高いことから、ビタミンKは最も古いタイプの天然抗酸化物質である可能性があると、研究者らは考えています。
Conrad博士:このように、生命の進化におけるビタミンKの役割について、新たな側面が明らかになることが期待されます。


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