脳転移したがん患者の放射線治療効果を高める」安価で入手できるアルギニン

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「脳転移したがん患者の放射線治療効果を高める」安価で入手できるアルギニン

アルギニンは脳に転移したがん患者に対する放射線治療効果を高めるようです。

enhanced the effectiveness of radiation therapy in cancer patients with brain metastases~

参照元:https://news.weill.cornell.edu/news/2021/11/arginine-an-inexpensive-oral-drug-could-enhance-radiation-therapy-for-cancer
– ワイル・コーネル・メディシン Weill Cornell Medicine. NOVEMBER 5, 2021 –

タンパク質を構成するアミノ酸の1つであるアルギニンを投与すると、脳に転移したがん患者に対する放射線治療の効果が高まることが、Weill Cornell MedicineおよびAngel H. Roffo Cancer Instituteの研究者らによる概念実証・無作為化臨床試験で明らかになりました。

11月5日にScience Advances誌に掲載された本研究では、脳転移のある患者31名を対象に、標準的な放射線治療の前に経口投与が可能なアルギニンを投与した結果が報告されました。

その結果、78%近くの患者が最長4年間の追跡期間中に脳腫瘍に完全または部分的な反応を示したのに対し、放射線治療の前にプラセボを投与された32人の患者では、そのような反応は22%にとどまりました。

この試験は、放射線治療の効果を高める「放射線増感剤」としてのアルギニンの有効性を測るために企画されました。

しかし、今回の結果とアルギニンの明らかな作用機序は、アルギニンがより広範に抗がん剤として有用であることを示唆しています。

本試験のデザインと実施に参加した血液・腫瘍内科准教授のLeandro Cerchietti博士(アルゼンチンのAngel H. Roffo Cancer Instituteで腫瘍内科医として勤務)は話します。

「今回の結果を受けて、私たちは、アルギニンと放射線治療との併用だけでなく、化学療法や免疫療法との併用、さらにはアルギニン単独での研究を続けていく必要があります。」

本試験は、Roffo Cancer InstituteのAlfredo Navigante医師が共同で実施しました。

アルギニンはL-アルギニンとも呼ばれ、安価で広く普及しており、一般的に安全性が高いと考えられています。

また、血流から脳に比較的容易に入ることができます。がんの治療にアルギニンを使用するというアイデアは、腫瘍が関連分子である一酸化窒素(NO)を大量に産生することで自らの生存を助けることが多いという観察結果から生まれました。

一酸化窒素は、血管内の血液の流れなど、体内のさまざまなプロセスを制御しています。

腫瘍細胞は、アルギニンから一酸化窒素を合成するNO合成酵素の産生量を増やすことで、一酸化窒素を多く産生します。

腫瘍がこの分子に依存していることを利用するには、NOの産生を抑えることが考えられるが、副作用の問題もあり、うまくいっていません。

研究者らは、NOの前駆体であるアルギニンを加えてNOの産生を高めることが有効ではないかと考えました。

というのも、腫瘍はNOを利用して成長と生存を助けることができるが、NOの産生を一定の限度以下に抑える必要があるからです。

Marullo博士は話します。

「一酸化窒素は反応性分子であり、それ自体、あるいは一酸化窒素から派生した他の反応性分子を介して、細胞にストレスや損傷を与える可能性があります。」

「放射線治療の前に、NO濃度の高い腫瘍にNOを過剰に投与すると、腫瘍が放射線によるDNA損傷を修復する能力が低下する可能性があり、実際にマウスを使った前臨床実験ではその効果が確認されました。」

今回の臨床試験では、脳転移(肺などの他の場所にできた原発腫瘍が脳に転移したもの)に対する放射線治療の1時間前に、高用量のアルギニンまたはプラセボの経口懸濁液を投与しました。

放射線治療の6カ月後には、アルギニン投与群の82%が神経学的症状を改善したか、少なくとも悪化しなかったのに対し、プラセボ投与群では20%でした。

また、アルギニン投与群で死亡した患者の多くは、がんが全身に転移していたためでした。

また、転移性のがんは一般的に予後が悪いとされていますが、アルギニンを投与された患者さんの中には、脳内外の腫瘍が消失した方もおり、治療の可能性が示唆されました。

また、今回の研究や先行研究から、アルギニンは腫瘍細胞を直接阻害するだけでなく、抗腫瘍免疫細胞の活性を高めることも示唆されたと、Cerchietti博士は述べています。

今回の有望な結果を受けて、研究チームは、アルギニンの単独あるいは他の抗がん剤との併用によるさらなる研究を開始し、計画しています。

Weill Cornell MedicineのSandra and Edward Meyer Cancer CenterのメンバーでもあるCerchietti博士は話します。

「原理的には、NO産生酵素を過剰に発現している腫瘍であれば、アルギニン治療に対して脆弱であり、そのような腫瘍は非常に多いです。」

しかし、さらなる研究が必要であり、臨床試験以外でのサプリメントの使用については、主治医に相談する必要があると警告しています。

今回の研究で使用されたアルギニンの用量は、医療機関でしか入手できない製剤です。

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