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がんや腫瘍などから身を守る「ナチュラキラー細胞活性化」
ナチュラルキラー細胞を活性化し、がんや腫瘍などから身を守る方法が解明されました。
New research reveals factors that control the interplay of natural killer (NK) cells — which are part of the body’s innate, or first line, immune response — with tumor cells, viral infections, and solid organ transplants.
参照元:https://www.massgeneral.org/news/press-release/Study-reveals-how-to-activate-natural-killer-cells-to-protect-against-cancer
– マサチューセッツ総合病院 Massachusetts General Hospital. MAR | 17 | 2022 –
新しい研究により、生体の自然免疫反応の一部であるナチュラルキラー(NK)細胞と、腫瘍細胞、ウイルス感染、固形臓器移植との相互作用を制御する因子が明らかになりました。
この成果は、マサチューセッツ総合病院(MGH)の研究者らによってScience Advances誌に発表されたもので、がん、侵入する病原体、自己免疫、炎症性疾患、移植拒絶反応から人々を守るために利用できる可能性があります。
NK細胞は、血液中の標的細胞を効果的に殺すことができますが、皮膚、消化管、膵臓、乳房などの組織や臓器にある感染細胞やがん細胞を殺すことができません。
がん免疫学者で皮膚科医、MGHがん免疫学センターおよび皮膚生物学研究センターの主任研究員であるShawn Demehri医学博士話します。
Demehri医学博士:固形臓器におけるNK細胞の殺傷機能の重大な欠如は、過去60年間、NK細胞生物学の分野を困惑させてきました。
Demehri医学博士の近年の研究により、なぜNK細胞が固形臓器の標的細胞を殺す能力を失うのかについての新しい説明が明らかにされました。
臓器は、高密度の細胞外マトリックス(ECM)、すなわち臓器の構造と完全性を維持するための足場を形成するタンパク質の精巧なマトリックスに埋め込まれた細胞でできています。
NK細胞とECMタンパク質の相互作用により、NK細胞が血管を出て固形臓器に入ると、キラー細胞からヘルパー細胞へと機能が即座に切り替わります。
ヘルパー細胞であるNK細胞は、隣接する他の免疫細胞を活性化し、支援する分子を産生します。
Demehri医学博士らのチームは、NK細胞が血液中で迅速なキラー反応を示し、組織や臓器で遅れたヘルパー反応を示すのは、人間の生存期間を延ばすための進化的な選択圧によって説明できるだろうと推測しています。
Demehri医学博士:血液への感染は、宿主の生存を確保するためにNK細胞による即時制御が必要です。しかし、末梢組織におけるNK細胞の直接的なキラー機能を抑制することで、局所的な刺激に対する過剰反応を防ぎ、患者が過剰な組織損傷や慢性炎症を起こしやすくなる可能性があります。一方、末梢組織でのウイルス感染に対しては、より標的を絞った、適切で強力な適応免疫反応を発達させるためのヘルパー機能が最も適していると思われます。
皮膚移植とメラノーマモデルマウスを用いたこの最新の研究で、研究者達は、コラーゲンとエラスチン(固形臓器に豊富に存在する主要なECMタンパク質)が、組織と癌におけるNK細胞機能の主要な制御因子であることを突き止めました。
MGHのがん免疫センター博士研究員のMaulik Vyas博士は話します。
Vyas博士:NK細胞が末梢組織でどのように制御されているかという我々の基本的な発見は、様々な健康状態の患者さんにとって幅広い意味を持ちます。臓器におけるNK細胞とECMの相互作用を調節する戦略は、固形癌、ウイルス感染症、炎症性疾患、自己免疫疾患、線維症に対抗する新しい治療法を提供し、臓器移植を改善する可能性があります。
例えば、科学者達は、高血圧の治療によく使われるロサルタンという薬が、腫瘍内のコラーゲン沈着をブロックすることで、それまで抵抗性だったメラノーマをNK細胞による殺傷に敏感にさせることを初めて明らかにしました。
コラーゲンは、乳がんや膵臓がんなどの固形がんに多く存在するため、この発見は重要です。
Vyas博士:私たちのデータは、固形がんの最適な治療のために、コラーゲンとNK細胞の相互作用を阻害し、現行の免疫療法と併用するという概念を強く支持します。そして、この研究結果は、ECMタンパク質が健康や病気におけるNK細胞やその他の免疫細胞の応答をどのように制御しているかを完全に理解するための今後の研究に対する強い根拠を与えてくれます。これにより、多種多様な疾患の治療において、ECMタンパク質と免疫系の相互作用を利用した将来の治療法の開発が大きく進展することになるでしょう。
研究の共著者には、Mark D. Bunting, Marta Requesens, Adam Langenbucher, Erik B. Schiferle, Robert T. Manguso, and Michael S. Lawrenceが含まれています。
資金提供は、バローズ・ウェルカム基金、シドニー・キンメル財団、米国国立衛生研究所から行われました。


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