新着記事
忘れるは悪い事ではない?「学習の一形態である【忘れる】」
私たちは様々な記憶を持っています。そして、思い出せない記憶は亡くなってしまっているのでしょうか?
研究種たちは、「忘れる」は学習の一形態である可能性があると提唱しています。
We create countless memories as we live our lives but many of these we forget.
参照元:https://www.tcd.ie/news_events/articles/why-do-we-forget-new-theory-proposes-forgetting-is-actually-a-form-of-learning/
– トリニティ・カレッジ・ダブリン Trinity College Dublin. 13th January 2022 –
私たちは生きている間に数え切れないほどの記憶を作り出していますが、その多くは忘れてしまっています。なぜでしょうか?
記憶が時間とともに失われていくという一般的な考え方に反して、「忘れる」ことは悪いことではないのかもしれない–というのが、科学者たちの見解です。
この新説は、国際的な学術誌『Nature Reviews Neuroscience』に掲載されたもので、特定の記憶にアクセスする能力の変化は、環境からのフィードバックと予測可能性に基づいていることを示唆しています。
忘却はバグではなく、脳が環境と動的に相互作用するための機能的な特徴である可能性があります。
私たちや他の多くの生物が暮らすような変化する世界では、記憶を忘れることは、より柔軟な行動や優れた意思決定につながる可能性があり、有益です。
もし、現在の環境と全く関係のない状況で得た記憶であれば、それを忘れることは、私たちの幸福感を向上させるポジティブな変化となり得るのです。
つまり、科学者たちは、私たちがある記憶を忘れる一方で、重要な他の記憶を保持することを学んでいると考えているのです。
もちろん、忘れるということは情報を失うという代償を払うことになりますが、少なくともいくつかのケースでは、忘れるということは記憶の喪失ではなく、記憶へのアクセスの変化が原因であることを示す研究が増えてきています。
この新しい理論は、トリニティ・カレッジ・ダブリンの生化学・免疫学部およびトリニティ・カレッジ神経科学研究所の准教授であるトーマス・ライアン博士と、トロント大学およびトロントのシックチルドレン病院の心理学部の教授であるポール・フランクランド博士によって提案されたものです。
ライアン博士とフランクランド博士はともにカナダの世界的研究機関であるCIFARのフェローであり、この分野で学際的研究を進めているChild & Brain Developmentプログラムを通じて今回の共同研究を可能にしました。
トリニティ生物医学研究所(TBSI)を研究チームとするライアン博士は話します。
「記憶は『エングラム細胞』と呼ばれる神経細胞の集合体に保存されており、これらの記憶をうまく呼び出すには、これらの集合体を再活性化することが必要です。このことを論理的に考えると、エングラム細胞が再活性化できない場合に忘却が起こるということになります。」
「記憶そのものは残っているが、特定のアンサンブルが活性化されないと、記憶を呼び出すことができない。それはあたかも、金庫に記憶が入っているのに、それを開けるための暗証番号を思い出せないようなものです。」
「私たちの新しい理論では、忘却は、エングラム細胞がアクセス可能な状態からアクセス不可能な状態に切り替わる回路のリモデリングによるものだと提唱しています。忘却の速度は、環境条件に影響されるので、忘却は、実は、環境とその予測可能性に応じて、記憶のアクセス性を変化させる学習の一形態であることを提唱しています。」
フランクランド博士は続けます。
「我々の脳が忘れる方法は複数ありますが、そのどれもが、エングラム(記憶の物理的な体現)をアクセスしにくくするように作用します。」
病気における病的な忘却の場合について、ライアン博士とフランクランド博士は語ります。
「重要なのは、この「自然忘却」は、ある状況下では可逆的であり、疾患状態、例えば、アルツハイマー病患者などでは、これらの自然忘却メカニズムが乗っ取られ、その結果、エングラム細胞のアクセス性が大幅に低下して、病的な記憶喪失になると考えていることです。」
この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!
関連記事
新着記事
-
男女ともに長生きになる「男女平等」2023.03.07健康
-
他者を犠牲にして利益を取る・利益を度外視して他者への害を取り除く2023.03.06人体・脳
-
「寿命を延ばす」良質な睡眠2023.03.05健康
-
見極める力を養う「チャットボットの精度」2023.03.04技術
-
健康増進と生きがいにつながる「森林浴」2023.03.03健康
-
米国の6人に1人「肥満による死」2023.03.02健康
-
週休4日制で生産を維持する2023.03.01社会
-
オンライン学習で学生に届く教育方法2023.02.28学習
-
学業成績に影響を与える「夜間の睡眠」2023.02.27健康
-
心の豊かさに大きく影響を与える「目的意識を持った10代の若者」2023.02.26健康
よく読まれている記事
N E W S & P O P U L A R最 新 記 事 & 人 気 記 事
WHAT'S NEW !!
-
健康
男女ともに長生きになる「男女平等」
【男女ともに長生きになる「男女平等」】 権利とは人間が作り出した構造ですが、男女平等が進むと男女ともに長生きになるようです。 The first global study to investi... -
人体・脳
他者を犠牲にして利益を取る・利益を度外視して他者への害を取り除く
【他者を犠牲にして利益を取る・利益を度外視して他者への害を取り除く】 他者を犠牲にして自分の利益を選ぶ、自分にとって利益は少ないが他者への害を防ぐ、道徳的なに... -
健康
「寿命を延ばす」良質な睡眠
【「寿命を延ばす」良質な睡眠】 良質な睡眠をとることは、寿命を何年も長くする可能性があります。 Getting good sleep can play a role in supporting your heart and... -
技術
見極める力を養う「チャットボットの精度」
【見極める力を養う「チャットボットの精度」】 ChatGPTをはじめ、チャットボットの精度は人が書いたものかどうかわからない程までの水準になっています。 The most rec...
-
人体・脳
なぜタイピングより手書きの方が、記憶に定着するのか
【なぜタイピングより手書きの方が、記憶に定着するのか】 ノルウェー科学技術大学の研究によると、手書きの方が物事をよく覚えることが判明しました。 様々なコンピュ... -
社会
どんな曲が好き?「 音楽の好みと性格の関連性は普遍的 」
【どんな曲が好き?「 音楽の好みと性格の関連性は普遍的 」】 激しい音楽を好んで聴く人は、激しい性格の持ち主なのでしょうか?研究者は、音楽の好みと性格の関連性は... -
人体・脳
視覚と意思決定領域の結びつきが強い「鮮明なイメージ能力がある人」
【視覚と意思決定領域の結びつきが強い「鮮明なイメージ能力がある人」】 鮮明にイメージできる人は、視覚ネットワークと意思決定に関連する脳の領域が強く結びついてい...
News
- 新着記事 -
Popular
- 人気記事 -
H A P P I N E S S幸 福
人気 (❁´ω`❁)
M E A L食 事
B R A I N脳
人気 (❁´ω`❁)
H E A L T H健 康
人気 (❁´ω`❁)
-
社会
自制心が健康と若さをもたらす理由
【自制心が健康と若さをもたらす理由】 デューク大学の研究チームは、自制心が心身に及ぼす影響を調査しました。 1000人を出生から45年間に渡って追跡した大規模調査で... -
人体・脳
健康な脳を保ち老化を遅らせる「アマゾンの先住民族ツィマネ族の生活習慣」
【健康な脳を保ち老化を遅らせる「アマゾンの先住民族ツィマネ族の生活習慣」】 ボリビア・アマゾンの先住民族であるツィマネ族が、アメリカやヨーロッパの人々に比べて... -
健康
高強度インターバルトレーニングは、適度な運動よりも心臓を強化する
【心臓を強化する高強度インターバルトレーニング】 ノルウェー科学技術大学の研究によると、トレーニングの強度が、病気の重症度を軽減し、心臓機能を改善し、作業能力...
-
社会
自制心が健康と若さをもたらす理由
【自制心が健康と若さをもたらす理由】 デューク大学の研究チームは、自制心が心身に及ぼす影響を調査しました。 1000人を出生から45年間に渡って追跡した大規模調査で... -
人体・脳
健康な脳を保ち老化を遅らせる「アマゾンの先住民族ツィマネ族の生活習慣」
【健康な脳を保ち老化を遅らせる「アマゾンの先住民族ツィマネ族の生活習慣」】 ボリビア・アマゾンの先住民族であるツィマネ族が、アメリカやヨーロッパの人々に比べて... -
健康
高強度インターバルトレーニングは、適度な運動よりも心臓を強化する
【心臓を強化する高強度インターバルトレーニング】 ノルウェー科学技術大学の研究によると、トレーニングの強度が、病気の重症度を軽減し、心臓機能を改善し、作業能力...
J O B仕 事
人気 (❁´ω`❁)
-
社会
週休4日制で生産を維持する
-
人体・脳
アイデアや閃きが降りてくる「横断的なコミュニケーション」
-
社会
大災害を読み解く鋭い解決策
-
思考・瞑想
賞や表彰が発明家の創造性を低下させる
-
人体・脳
創造的な人はここが違う!「非創造的なハブを回避し非典型的なアプローチをする」
-
社会
アメリカ陸軍で既に多数の成功を収めている「人々を創造的にするトレーニング」
-
社会
2年は普及しない?「カテゴリーイノベーション戦略」
-
社会
管理者級以上必見「創造性を引き出す同僚間の友情とサポートを育む組織づくり」
-
社会
アイデアを創出する人数「少人数のグループのほうが新しいアイデアが出やすい」
-
健康
散った気を元の集中に戻す「1日最大50%費やす迷いを断つマインドフルネス」
-
社会
移動によるエネルギーが激減「環境に優しく誰でも参加できるオンライン会議」
-
社会
山火事コスト数十億ドルのコスト削減「インドネシアの泥炭地回復」
-
社会
価格末「99円」設定が販売者に不利益を及ぼす驚愕の理由
-
社会
購買意欲を掻き立てる商品提示方法
-
社会
「感情的異質性」がチームの創造性を高める
-
社会
従業員の創造性を高める驚愕の方法「報酬を選択制にする」
-
社会
テクノロジーの力でセレンディピティを生み出す
-
社会
様々なテーマの問題への取り組みにつながる「ダ・ヴィンチ構想」
-
社会
改善が必要な状況に「やめる」という解決策がでない理由
-
社会
空想が苦手な理由と、その修正方法
-
学習
パズル解きの極意、最良の選択より優れた驚愕の方法
-
社会
大麻が独創的で実現不可能なアイデアを創出するという実験結果
-
社会
記憶に残るユーモアを含んだニュース
-
社会
なぜメッセージと画像が一致してない情報は伝わらないのか
-
社会
消費者を購買に結びつける音楽
-
技術
自動化工場などの緊急事態に備えて知識を生かしておく方法
-
社会
「生産性も顧客満足度も向上」プロジェクトに自主性を持たせる
-
人体・脳
人は1日に35,000回の意思決定をしている「意思決定を行うアルゴリズム」
-
社会
他文化と頻繁衝突する文化圏は協力的なゲームが流行?「ゲームからみる文化」
-
社会
「通勤はわるいもの?」モバイルセンシングで仕事の成果と通勤の関連性を解明
-
社会
テクノロジーは労働者の幸福度にどのような影響を及ぼすか
-
社会
雇用の創出ではなく雇用の置換が進む「ロボットなどの作業の自動化」
-
社会
「柔軟で弾力性のある対応が可能」生物系を模倣した多様なサプライチェーン
-
社会
「患者のメンタルヘルスケアを向上させる」患者と心理療法士のマッチング
-
学習
デジタルデバイス用に最適なフォント「AdaptiFont」
T E C H N O L O G Y技 術
人気 (❁´ω`❁)